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執筆者の写真はらだまほ

質感、空間の手触り

更新日:2020年12月14日



コロナ禍になって、約半年が過ぎた。

その間に、私はベイビーシアターの本番を何回か終え、

自身の創作の稽古もし、プロジェクトを進め、振付家として作品に参加したりした。

コロナ以前よりも自分発信の企画が増えたし、アーティスト同士の繋がりも増えた。

大変なこともある反面、そればかりではなかった。

それは、とてもラッキーで、ありがたいことだと思う。


少し話がずれるが、、、、

共に活動している人は承知の事実だと思うが、私はとにかく舞台に関することに神経質なタイプだ。おそらく。

私にとっては当然のことも、きっと当然でないことがたくさんある。

当然、そのずれによる軋轢もある。

価値観の違いが、そのまま人間性の否定にならない世界が良いなあとひしひしと感じる。

私の基準とあなたの基準は別で、それはどちらが悪いわけでもなく、しょうがない。

事実は事実として認識して、そこに感情が混ざらない世界が良いなあと思う。



ありがたいことに、この状況で、考えうる最大の対策をした上で、ベイビーシアターの上演を何回かやらせていただいた。

その中で、ジャンルによってこだわるポイントが全く異なった(注1)のが興味深かったので、文章として記録しておく。

注1→ベイビーミニシアターという、多ジャンルのアーティストがそれぞれ作品を持っている作品群のコロナ対策を共に行なっている。作品についてははこちら


ここに書くことはあくまでも私が感じたことなので、もちろん異論は受け付ける。

ここからさらに発展していくために。議論を深めるために。



まずおどりの場合。(ダンス系は私1人のため、ほぼ私や私の周りの場合だが)

稽古はマスク着用がほとんど。

本番は、マスクやフェイスシールドを着用している場合としていない場合がある。

ダンス界隈に広げると、最近はしていない公演も増えてきた。


おどりは、基本的に表情よりも身体の動きが重要。

ベイビーシアターにおいて、私の場合は"視界に入る"という言い方をしているが、

もっと噛み砕くと、


"相手のことを見ていなくても相手のことがわかる距離感"


が大切だと思う。

ダンスのジャンルに限らず、どんなに繊細で濃密なことをやっていても、それが伝わらない距離感にいたら魅力が半減してしまう。

なので、表情の有無よりも観客と演者の距離がかなり重要。


個人的には、マスクをせずに対面して良いとされる距離(3〜4m)離れてしまうと、

視界の中に観客を入れないと観客の様子が掴みにくい。


映像にとって代られるのでは、、?という心配はおそらくほぼない。

映像は映像の良さ/面白さがあるけど、やっぱりおどりの本質、真髄は生だね、という感覚がダンス界では多いような気がする。




演劇の場合。

おそらく、稽古はマスクを着用していないか、フェイスシールドやマウスシールド等、表情が見えるもの。

本番はマスクを着用しない場合が多い。


話を聞いていると、「マスクをしてやるならやらない方がまし」という意見が多い。

そのため、マスクをせずにできる距離感や方法で公演を行う。

やはり、演劇は感情が必須、そして感情が一番表にでるのが表情、ということなのだろう。



音楽の場合。

マスクできる人はしているが、できない人はしていない(当然ですね、笑)。


稽古中から、距離や風向きなどに注意を払っている。

音楽は、最も距離を取ることに寛容な気がする。

ただ、やっている楽器によっておおらかさは全く違う。

特に、演奏に呼吸を使うかどうかで違いがある。

マイクを使用するかどうか、という点にも個々人のこだわりがあり、そこの違いも大きい。

音楽で何を伝えるのか、という点で大きく変わるし、最も振り幅が広いように感じた。



ここまでそれぞれ考えたが、このそれぞれのこだわりこそが、そのジャンル/その人が思うアートの質感、空間の手触りなのだと思う。

つまり、その人が観客とコミュニケーションを取るとき、何を使って、どのようにとっているのかがわかるというか。

私の場合は、視界の外で投げかけられた出来事に反応できる距離まで近づいておきたい、ということが最優先事項のようで、そのために最善策を考える。マスクをしたり、喋るシーンをカットしたり。


私はマスクをする作品もあればしない作品もあるけど、マスクをせずに遠くで上演した場合、観客の感覚とチューニングするのがとても難しかった。


1つ、対策をする上で忘れたくないのは、観客側の負担と演者側の負担。

自分の想いを実現するために、観客側に過度な負担を強いていないか?そのバランスをきちんと考え続けたいと思う。適切な負荷で、観客のリスクを最大限減らす努力ができているか。



空間の手触りをしっかり掴むために、そして観客の安全も、演者の安全も守るために。

これからもどう上演していくのがベストか、探し続けたい。




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